ニラカナ!航海日誌 作 蒼雷のユウ

ニラカナ!航海日誌 第一話「墜落」1

墨を流し込んだかのような漆黒の空間。その所々に小さな輝きが点在している。星という名の島が漆黒の大海に浮かんでいる。酸素も無く、無重力であり、無の世界でありながら存在する。無から有となった世界。 ――宇宙。 人々はその果てしない世界をそう呼んだ。 人類が宇宙に出る事は至難の業だ。それこそ、居住性はおろか、人が生活できるだけの装甲の強度が必要であり、地上での普通の航行では隣の惑星まで何年もかかってしまう。 

ニラカナ!航海日誌 第一話「墜落」2
 シャトルは大気圏突破後、再びステルス機能を起動して船体を周囲の景色に合わせるように擬態させる。 簡単にいえば、カメレオンが持つ能力を疑似的に作り出すのである。これにより、カメラや肉眼では姿は見られないようにできる。但し、熱源反応だけは隠しきれないが、それを探知できる技術はこの惑星に殆どないので心配ない。 シャトルは雲を突き抜け、ぐんぐん地表が近付き、山が、海が目視出来るようになり、それが大きくなった。 

ニラカナ!航海日誌 第二話「上陸」1
 沖縄県豊見城市浦島群島、竜空島「恋鯨ビーチ」北端部 鯨にしか見えないが、実際は宇宙を旅する船からボートで海を渡って来た数人の男女。その内の一人であるファルクスは彼らのリーダーである。 彼らはビーチの端、岸辺にボートを接舷させると、ゆっくりと上陸する。「ん。ん〜〜〜。固まった地面は、やっぱ良いねぇ」 地面に足を着けたファルクスは、両腕を上げて背伸びする。今までグラグラ揺れる環境に居たのだから、普通の上陸は久しぶりな気分だったのだ。 

ニラカナ!航海日誌 第二話「上陸」2
「お話、有難う御座いました。色々回ってみます」 エレナは目の前に居る学生に礼を告げ、ローラと合流する為にその場を後にする。ポケットからメモ用の紙を取り出して、先ほどの情報を書き留めながら歩く。「えっと・・・。『この群島には<マジムン>という実在の魔物が住み着いている。マジムンは島の奥に住み着いており、奥に行かなければ出会うことは無いけど、人間を襲うらしい。彼らは魔物らしく愚鈍であり凶暴。本能で動く存在であり、完全に滅さなければ危険は回避できない』か。

ニラカナ!航海日誌 第二話「上陸」3
一方その頃の数十メートル離れた恋鯨ビーチ内にて、茶銀髪の青年ファルクスが残念そうな表情を浮かべて闊歩していた。「や〜れやれ。・・・あの娘、結構可愛かったのになぁ。落とせなくて残念だったが・・・。しかし、あの去り方は不自然だったなぁ。一体何を思ったのかな。ビーチからわざわざ出るなんて―――」「ファルクス中尉殿。こちらか」その後ろから、黒髪でモミアゲを異様に伸ばした和風の男、ミナカが駆け寄ってきた。

◆蒼雷のユウ ブログ「蒼雷の自由な亜空間」